近年、多くの企業が「ウェルビーイング経営」に注目しています。
従業員の幸福度を高めることで、企業の生産性向上や離職率の低下につながることが明らかになってきたためです。しかし、「健康経営とは何が違うの?」「具体的にどう取り組めばいいの?」と疑問を感じている経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ウェルビーイング経営の基本概念から健康経営との違い、そして実際の取り組み事例まで詳しく解説します。
従業員の幸福度向上に向けた第一歩として、健康管理アプリ「Givefit」の活用もおすすめです。毎日の健康を簡単に記録でき、リーズナブルに従業員の健康管理が行えるため、ウェルビーイング経営の土台づくりに最適なツールとなっています。
ウェルビーイング経営とは「社員の幸福を起点に企業の成長を実現」する経営
ウェルビーイング経営とは、従業員一人ひとりの幸福や満足度を最優先に考え、その実現を通じて企業全体の成長を目指す経営手法のこと。
単に業績を追求するだけでなく、働く人々が心身ともに健康で、やりがいを持って働ける環境を整えることで、結果として生産性の向上や優秀な人材の確保につながります。
従来の経営では、企業の利益が最優先され、従業員の幸福は二の次になりがちでした。しかしウェルビーイング経営では、従業員の幸福こそが企業成長の源泉であるという考え方に立脚しています。
従業員が心身ともに満たされた状態で働くことで、創造性が高まり、チームワークが向上し、離職率も低下するのです。
そもそもウェルビーイングとは?
ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態を指す言葉です。
世界保健機関(WHO)が1946年に定義した健康の概念が基になっており、単に病気がないというだけでなく、心も体も社会生活も充実している状態を意味します。
この概念を構成する3つの要素を見てみましょう。
身体的ウェルビーイングは、体が健康で元気に活動できる状態。適切な運動や栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠などによって実現されます。
精神的ウェルビーイングは、ストレスが適切に管理され、前向きな気持ちで日々を過ごせる心の状態です。自己肯定感が高く、やりがいを感じられることが重要になります。
社会的ウェルビーイングは、良好な人間関係に恵まれ、社会とのつながりを実感できる状態。職場での信頼関係や、家族・友人との絆が含まれます。
ウェルビーイング経営では、これら3つの要素すべてにバランスよくアプローチし、従業員の総合的な幸福を追求することが求められるのです。
国内でウェルビーイング経営の企業が増えている
日本国内でも、ウェルビーイング経営に取り組む企業が急速に増加しています。その背景には、いくつかの社会的な要因が存在します。
まず、労働人口の減少による人材不足が深刻化していること。優秀な人材を確保し、長く働いてもらうためには、給与や待遇だけでなく、働きやすさや働きがいが重要な要素となってきました。従業員の幸福度を高めることが、人材獲得競争を勝ち抜く鍵となっているのです。
また、働き方改革の推進も大きな要因の一つ。長時間労働の是正やワークライフバランスの改善が求められる中、従業員の健康や幸福に配慮した経営が注目を集めています。
さらに、メンタルヘルス問題の増加も無視できません。ストレスや過労による心身の不調が社会問題化する中、予防的な観点から従業員のウェルビーイングに投資する企業が増えているのです。
実際に、経済産業省も「健康経営優良法人認定制度」を通じてウェルビーイング経営を推進しており、多くの企業がこの認定取得を目指しています。
投資家の間でも、ESG投資の観点から従業員の幸福度を重視する動きが広がっており、ウェルビーイング経営は今後さらに加速していくと考えられます。
ウェルビーイング経営が注目される背景
ウェルビーイング経営が多くの企業から注目を集めるようになった背景には、ビジネス環境の変化や経営の考え方の進化があります。主な理由として、以下の4つが挙げられます。
「人の幸福」が企業競争力の指標になっている
従来、企業の競争力は売上高や利益率、市場シェアといった財務指標で測られてきました。しかし近年、「従業員がどれだけ幸せに働いているか」が企業の真の競争力を示す重要な指標として認識されるようになっています。
この変化の背景には、幸福度の高い従業員ほど生産性が高く、創造性を発揮しやすいという研究結果が蓄積されてきたことがあります。幸せな従業員は、困難な課題にも前向きに取り組み、チームメンバーとの協力関係も良好です。結果として、イノベーションが生まれやすく、顧客満足度の向上にもつながるのです。
また、採用市場においても従業員の幸福度は重要な意味を持ちます。求職者は給与や福利厚生だけでなく、「その会社で働く人々が幸せそうか」を重視するようになりました。口コミサイトやSNSで従業員のリアルな声が簡単に確認できる時代において、ウェルビーイングへの取り組みは企業のブランド価値を左右する要素となっているのです。
人的資本経営の流れが加速している
人的資本経営とは、従業員を単なるコストではなく、企業価値を生み出す「資本」として捉え、その価値を最大化するための投資を行う経営手法のこと。
この考え方が世界的に広がる中、日本でも2023年3月期から上場企業に対して人的資本の情報開示が義務化されました。
人的資本経営では、従業員のスキルアップや能力開発への投資はもちろん、従業員が能力を最大限発揮できる環境づくりが重視されます。そして、その環境づくりの中核にあるのがウェルビーイングの向上です。
投資家も、企業の人的資本への取り組みを評価基準の一つとして注目しています。従業員の幸福度やエンゲージメント、離職率といった指標は、その企業の長期的な成長可能性を示すシグナルとして扱われるようになりました。
つまり、ウェルビーイング経営は社会的責任を果たすだけでなく、資本市場からの評価を高める戦略的な取り組みでもあるのです。
従業員の幸福度が企業の持続的成長と関係している
複数の調査や研究によって、従業員の幸福度と企業業績の間には明確な相関関係があることが実証されています。
幸福度の高い従業員を抱える企業は、そうでない企業と比較して業績が良好な傾向にあるのです。
具体的なメリットとして、まず生産性の向上が挙げられます。幸せを感じながら働く従業員は、集中力が高く、効率的に業務を進めることができます。ある研究では、幸福度の高い従業員は約10%程生産性が高いという結果が報告されています。
次に、離職率の低下も重要なポイント。従業員の入れ替わりには採用コストや教育コストがかかるだけでなく、組織のノウハウが失われるリスクもあります。ウェルビーイングに配慮した職場では従業員の定着率が高く、長期的な視点での人材育成が可能になるのです。
さらに、顧客満足度の向上も見逃せません。幸福度の高い従業員は、顧客対応においても前向きで丁寧な姿勢を示します。その結果、顧客満足度が向上し、リピート率や口コミによる新規顧客の獲得につながります。
このように、従業員の幸福度向上は短期的なコストではなく、企業の持続的成長を支える重要な投資として認識されるようになっているのです。
参考:The university of chicago presss journals「Happiness and Productivity」
健康経営からウェルビーイング経営へ進化している
ウェルビーイング経営は、健康経営の概念をさらに発展させたものと言えます。
健康経営が主に従業員の身体的健康に焦点を当てていたのに対し、ウェルビーイング経営は心の健康や社会的なつながり、働きがいといった、より広範な要素を包括的に捉えているのです。
健康経営では、定期健康診断の受診率向上や、運動促進プログラムの実施、禁煙支援といった取り組みが中心でした。これらは確かに重要ですが、従業員の幸福度を高めるには十分ではありません。体は健康でも、やりがいを感じられない、職場の人間関係に悩んでいるといった状態では、真の意味で満たされているとは言えないからです。
ウェルビーイング経営では、健康管理に加えて、柔軟な働き方の実現、キャリア開発の支援、心理的安全性の高い職場づくり、ワークライフバランスの推進など、多角的なアプローチを取ります。従業員が「この会社で働けて幸せだ」と感じられる状態を目指すのです。
また、健康経営が「病気の予防」という守りの姿勢だったのに対し、ウェルビーイング経営は「幸福の追求」という攻めの姿勢を持っています。最低限の健康維持から、より高いレベルの幸福度を目指す方向へとシフトしているのが、現代の企業経営のトレンドと言えるでしょう。
ウェルビーイング経営と健康経営の違い
ウェルビーイング経営と健康経営は、どちらも従業員を大切にする経営手法ですが、その目的や範囲、アプローチには明確な違いがあります。両者の違いを理解することで、自社に必要な取り組みが見えてくるでしょう。主な違いは以下の2点です。
健康経営は「社員の身体の健康」を守る経営
健康経営は、従業員の身体的な健康維持・増進を主な目的とした経営手法です。病気の予防や早期発見、健康リスクの低減に重点を置き、医療費の削減や生産性の向上を目指します。
具体的な取り組みとしては、定期健康診断の受診率向上、メタボリック症候群の予防プログラム、インフルエンザの予防接種補助、禁煙サポート、運動習慣の促進などが挙げられます。これらは主に「病気にならないこと」「健康を損なわないこと」を目標としており、守りの姿勢が特徴です。
健康経営の大きな特徴は、制度中心のアプローチを取ることにあります。健康診断の実施、保健指導の提供、フィットネスジムの利用補助といった、明確な制度やプログラムを整備することで従業員の健康をサポート。これらの制度は数値で効果を測定しやすく、PDCAサイクルを回しやすいという利点があります。
また、健康経営では「健康経営優良法人」の認定取得を目指す企業も多く、一定の基準を満たすことが重視される傾向にあります。取り組みの範囲は主に身体的健康に限定されており、体の不調を防ぐことが中心的なテーマとなっているのです。
ウェルビーイング経営は「社員の幸福と充実」を高める経営
一方、ウェルビーイング経営は、従業員の身体的健康だけでなく、精神的な充実感、社会的なつながり、仕事のやりがいなど、より広範な幸福を追求する経営手法です。「病気でない」という状態を超えて、「心から満たされている」「生き生きと働いている」という積極的な状態を目指します。
取り組みの範囲は多岐にわたります。健康管理に加えて、柔軟な働き方の導入、自己成長の機会提供、心理的安全性の高い職場づくり、多様性の尊重、ワークライフバランスの実現など、従業員の人生全体の質を高める施策が含まれるのです。
ウェルビーイング経営の最大の特徴は、文化中心のアプローチを取ることにあります。制度を整えるだけでなく、従業員が自然と幸せを感じられる組織文化や風土を醸成することを重視。上司と部下の信頼関係、チーム内のコミュニケーション、失敗を許容する雰囲気など、目に見えにくい要素にも焦点を当てます。
例えば、リモートワークの制度があっても、実際には使いづらい雰囲気があれば意味がありません。ウェルビーイング経営では、制度だけでなく「本当に従業員が幸せを感じられているか」という実態を大切にするのです。
また、一律の施策ではなく、個人の価値観や状況に応じた多様な選択肢を用意することも特徴の一つ。ある人にとっての幸せが別の人にとっても同じとは限らないため、従業員一人ひとりが自分らしく働ける環境づくりを目指します。
健康経営が「最低限の健康を守る土台」だとすれば、ウェルビーイング経営は「その上に幸福という家を建てる」取り組みと言えるでしょう。両者は対立するものではなく、健康経営の基盤の上にウェルビーイング経営を積み重ねることで、従業員にとっても企業にとっても最良の結果が得られるのです。
ウェルビーイング経営を行うメリットとデメリット
ウェルビーイング経営は多くの利点をもたらす一方で、導入にあたっていくつかの課題も存在します。メリットとデメリットの両面を理解した上で、自社に適した取り組み方を検討することが重要です。
社員の幸福度向上で組織の生産性向上につながる
ウェルビーイング経営の最大のメリットは、従業員の幸福度が高まることで組織全体の生産性が向上することです。幸せを感じながら働く従業員は、業務に対する集中力やモチベーションが高く、より質の高い成果を生み出します。
具体的な効果として、まず業務効率の改善が挙げられます。心身ともに充実した状態で働く従業員は、判断力や思考力が向上し、ミスや手戻りが減少。結果として、同じ時間でより多くの成果を上げられるようになります。
また、創造性の発揮も重要なポイントです。ストレスが少なく、心理的に安全な環境では、従業員は新しいアイデアを提案しやすくなります。イノベーションが生まれやすい土壌が育つのです。
さらに、チームワークの向上も見逃せません。幸福度の高い従業員は、他のメンバーに対しても協力的で前向きな姿勢を示します。コミュニケーションが活発になり、組織全体の連携がスムーズになるでしょう。
加えて、離職率の低下も大きなメリット。従業員が会社に満足し、やりがいを感じていれば、簡単には辞めません。採用や教育にかかるコストが削減され、ベテラン社員の経験やノウハウが組織に蓄積されていきます。長期的に見れば、人材の定着は企業にとって大きな競争優位性となるのです。
企業ブランド価値向上により採用や信頼度が上がる
ウェルビーイング経営に取り組むことで、企業のブランド価値が向上し、様々な場面でプラスの効果が生まれます。特に人材採用や取引先・顧客からの信頼獲得において、大きなアドバンテージとなるでしょう。
採用面では、求職者にとって魅力的な企業として認識されやすくなります。現代の求職者、特に若い世代は、給与や待遇だけでなく「その会社で働く人が幸せそうか」「自分らしく働けるか」を重視する傾向にあります。ウェルビーイングを大切にする企業という評判が広まれば、優秀な人材が集まりやすくなるのです。
また、現在働いている従業員が自社を友人や知人に推薦してくれる効果も期待できます。いわゆるリファラル採用が活発になり、企業文化にフィットした質の高い人材を効率的に採用できるようになります。
取引先や顧客からの評価向上も重要です。従業員を大切にする企業は、社会的責任を果たしている企業として好意的に受け止められます。特にBtoB取引では、取引先選定の際に相手企業の従業員への姿勢を評価基準に含めるケースが増えているのです。
さらに、投資家からの評価も高まります。ESG投資の観点から、従業員のウェルビーイングに配慮している企業は持続可能性が高いと判断され、投資対象として選ばれやすくなるでしょう。企業の長期的な価値向上につながる取り組みと言えます。
成果が短期的に見えにくい
一方で、ウェルビーイング経営にはデメリットや課題も存在します。最も大きな課題は、取り組みの成果が短期的には見えにくいということです。
健康診断の受診率や残業時間のように数値化しやすい指標と異なり、従業員の幸福度や心の充実感は測定が難しく、効果の実感までに時間がかかります。施策を導入してすぐに生産性が上がったり、離職率が下がったりするわけではないため、「本当に効果があるのか」と疑問を持たれることもあるでしょう。
この見えにくさが、経営層が投資判断に迷いやすいケースを生んでいます。明確なROI(投資対効果)を示すことが難しいため、予算承認のハードルが高くなるのです。特に業績が厳しい時期には、「今は従業員の幸福よりも売上が優先」という判断になりがちです。
また、効果測定の仕組みづくり自体にも工夫が必要になります。従業員満足度調査やエンゲージメント調査を定期的に実施し、データを蓄積していく必要があります。しかし、こうした調査結果と実際の業績との因果関係を証明することは容易ではありません。
さらに、組織文化の変革には時間がかかるという点も理解しておく必要があります。制度を整えても、実際に従業員が幸せを感じられる職場になるまでには、数年単位の継続的な取り組みが求められるのです。
短期的な成果を求めすぎると、本質的な取り組みがおろそかになる危険性もあります。ウェルビーイング経営は、長期的な視点で粘り強く続けることが成功の鍵と言えるでしょう。
経営幹部の意識変革が必要
ウェルビーイング経営を成功させるためには、経営幹部自身の意識変革が不可欠です。しかし、これが大きな壁となるケースも少なくありません。
多くの経営幹部は、従来の「業績第一」「利益優先」という考え方で成功体験を積んできました。そのため、「従業員の幸福を優先することで本当に業績が上がるのか」という疑念を持ちやすいのです。特にベテラン経営者ほど、昔ながらの価値観から脱却することが難しい傾向にあります。
また、自分自身が長時間労働や厳しい環境で成果を出してきた経験から、「多少の無理は当たり前」「仕事は厳しくて当然」という考えを持っている場合もあります。こうした考え方は、無意識のうちに若い世代や部下に押し付けられ、ウェルビーイングの実現を妨げる要因となってしまうのです。
経営幹部の意識が変わらなければ、いくら人事部門が制度を整えても、現場レベルで浸透しません。例えば、社長が深夜までメールを送り続けていたら、従業員はワークライフバランスを保ちにくくなります。経営層が率先して新しい働き方を実践し、メッセージを発信していく必要があるのです。
さらに、中間管理職の意識改革も課題となります。経営層がウェルビーイングの重要性を理解していても、現場のマネージャーが旧来型のマネジメントを続けていては意味がありません。全社的な教育や研修を通じて、組織全体の価値観を変えていく取り組みが求められます。
こうした意識変革には時間と労力がかかりますが、トップのコミットメントなしにウェルビーイング経営を成功させることは困難です。経営幹部自身が学び続け、変化を恐れない姿勢を持つことが、何よりも重要なポイントと言えるでしょう。
ウェルビーイング経営へ取り組み手順とやること
ウェルビーイング経営を実際に導入する際には、計画的なステップを踏むことが成功の鍵となります。いきなり大規模な改革を目指すのではなく、段階を踏みながら着実に進めていくことが重要です。ここでは、具体的な取り組み手順を4つのステップに分けて解説します。
| Step | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| Step1 | 自社の現状を可視化し、社員の”幸福課題”を把握する | 従業員アンケートやエンゲージメントサーベイで現状を定量化。「働きがい」「人間関係」「心身の健康」「キャリア意識」などの領域で診断し、満たされていない要素を数値で見える化する。 |
| Step2 | 経営理念と連動したウェルビーイング方針を策定する | 経営者が自ら「社員の幸福を経営の中心に置く」方針を発信。経営理念やビジョンと連動させた形で、ウェルビーイングへのコミットメントを明確にする。 |
| Step3 | 小さく始められる施策を設計し、成功体験を積み上げる | 1部署・3か月単位で実践可能な施策からスタート。月1回の1on1ミーティング、感謝を伝える社内投稿制度、健康管理アプリの導入などを試行し、成果を共有する。 |
| Step4 | KPIを設定し、経営と人事の両面から継続的に改善する | 離職率、エンゲージメントスコア、健康指数などの定量指標と、満足度や文化浸透度などの定性指標を設定。PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していく。 |
それでは、各ステップについて詳しく見ていきましょう。
Step1:自社の現状を可視化し、社員の”幸福課題”を把握する
ウェルビーイング経営の第一歩は、現状把握から始まります。まずは従業員が何に満足し、何に不満を感じているのかを正確に理解することが重要です。
具体的には、従業員アンケートやエンゲージメントサーベイを実施し、現状を定量化しましょう。調査項目としては、「働きがい」「人間関係」「心身の健康」「キャリア意識」「ワークライフバランス」といった5つ程度の領域に分けて診断すると、課題が明確になりやすくなります。
例えば、「仕事にやりがいを感じていますか」「上司や同僚との関係は良好ですか」「心身ともに健康だと感じますか」といった具体的な質問を用意。5段階評価などで回答してもらい、社員が感じる”満たされていない要素”を数値で見える化することで、どの領域から優先的に取り組むべきかが明確になります。
また、アンケートだけでなく、個別面談やグループインタビューを組み合わせることで、数字では表れない本音や背景事情を把握することも大切です。従業員の生の声を聞くことで、より実効性の高い施策を設計できるでしょう。
Step2:経営理念と連動したウェルビーイング方針を策定する
現状把握ができたら、次は自社のウェルビーイング方針を明確にする段階です。ここで重要なのは、既存の経営理念やビジョンと切り離さないこと。単なる福利厚生の強化として扱うのではなく、経営戦略の一環として位置づける必要があります。
経営者自身が「社員の幸福を経営の中心に置く」という方針を明確に発信することが何よりも重要です。トップのコミットメントなしには、現場レベルでの浸透は期待できません。特に中小企業では、経営者のメッセージが最大の推進力となるのです。
具体的には、経営方針説明会や社内報、社内SNSなどを活用して、「なぜウェルビーイングが重要なのか」「どのような組織を目指すのか」を自分の言葉で語りましょう。単なる制度導入のお知らせではなく、経営者の想いや価値観を伝えることで、従業員の共感と協力を得やすくなります。
また、ウェルビーイング推進のための専任チームや担当者を設置することも効果的。経営層と現場をつなぐ役割を担い、継続的に取り組みを推進していく体制を整えましょう。
Step3:小さく始められる施策を設計し、成功体験を積み上げる
方針が固まったら、いよいよ具体的な施策の実行段階です。ここで陥りがちな失敗が、最初から完璧を目指しすぎること。いきなり大規模な改革を目指すのではなく、小さく始めて成功体験を積み上げていくアプローチが効果的です。
まずは「1部署・3か月」単位で実践できる施策からスタートしましょう。例えば以下のような取り組みが考えられます。
- 月1回の1on1ミーティング導入:上司と部下が定期的に対話する機会を設け、業務の悩みやキャリアの希望を共有
- 感謝・称賛を伝える社内投稿制度:お互いの良い行動を認め合う文化を醸成
- メンタルケアアプリや健康データ共有の導入:手軽に心身の状態をチェックし、セルフケアを促進
これらの施策を試験的に導入し、参加者からフィードバックを集めます。そして、成果を社内で共有することで、「自分たちの職場が良くなっている」という実感を従業員に持ってもらうのです。
小さな成功事例が生まれたら、それを全社に展開していきましょう。最初の一歩が成功することで、次のステップへの推進力が生まれます。
Step4:KPIを設定し、経営と人事の両面から継続的に改善する
施策を実行したら、必ずその効果を測定し、改善につなげることが重要です。ウェルビーイング経営を「一過性の取り組み」で終わらせないために、KPI(重要業績評価指標)を設定し、PDCAサイクルを回していきましょう。
測定すべき指標は、定量指標と定性指標の両面から設定します。
- 離職率(特に若手・中堅社員)
- エンゲージメントスコア
- 健康診断の各種指標
- 有給休暇取得率 ・残業時間
- 従業員満足度
- 職場の心理的安全性スコア
- ウェルビーイング文化の浸透度
- 社内コミュニケーションの質
これらの指標を毎年同じタイミングで測定し、経営会議や人事会議でレビューします。数値の変化だけでなく、「なぜ改善したのか」「なぜ悪化したのか」という背景要因まで分析することが大切です。
そして、分析結果をもとに施策を見直し、改善策を実行。再度測定して効果を確認するというPDCAサイクルを継続的に回していくことで、ウェルビーイングが“文化として根づく経営”へと発展していきます。
重要なのは、短期的な成果だけを追わないこと。ウェルビーイング経営は、数年単位の長期的な取り組みです。粘り強く続けることで、従業員も企業も共に成長できる組織が実現するのです。
ウェルビーイング経営の取り組み事例
ここからは、実際にウェルビーイング経営に取り組んでいる企業の事例を紹介します。それぞれの企業がどのような工夫をしているのか、具体的な施策を見ていきましょう。
サラヤグループ
サラヤグループは、世界の「衛生・環境・健康」に貢献することを企業理念に掲げる企業です。同社は健康経営から一歩進んで、従業員のウェルビーイング実現を明確に目指している点が特徴的。
最も注目すべきは、従業員のウェルビーイングな状態を測る具体的な数値と目標値を公開していることです。ワーク・エンゲージメント、プレゼンティーイズム(出勤しているが体調不良などで生産性が低下している状態)、アブセンティーイズム(欠勤による労働損失)の3つの指標を設定し、2028年に向けた目標値を明示しています。
同社は「健康とは単に病気にならないということだけではなく、病気にかかっていても健やかに安心して暮らせること、どんな人も今より健やかな心身を目指せること」と捉え、最終的には人として豊かな自己の能力や個性を実現できるウェルビーイングな状態へ導くことを目指しているのが特徴です。
具体的な取り組みとしては、PHR(パーソナルヘルスレコード)サービスを導入し、全従業員が食事や睡眠、運動などのライフログを記録できる環境を整備しています。また、スマホアプリを活用したウォーキングイベントの開催や、禁煙外来の費用補助、感謝を伝え合う「サンキューしよう」イベントなど、心身の健康と職場の人間関係の両面からアプローチしているのが印象的です。
数値目標を設定し、PDCAサイクルを回しながら着実に改善を進めている点は、他の企業にとっても参考になる取り組みと言えるでしょう。
参考:サラヤグループHP
沖電気工業株式会社
沖電気工業(OKI)は、「心理的に安全な職場」「心身の健康」「働きがいの醸成」の3つを『OKI Well-Being』と定義し、多様な人財が前向きに挑戦できる環境整備に取り組んでいる企業です。
同社の特徴は、対話を重視した組織風土づくりにあります。「組織開発」と「拓く場」という2つの仕組みを導入し、オープンでフラットな対話をベースに全社員の行動変容を促しているのです。
組織開発では、各部門が「ありたい姿」を実現するために組織開発プロセスに沿ってアクションを行い、組織変革に取り組みます。一方、「拓く場」では、すぐに答えが出ない問いに対して、部門を超えて集まった有志の社員が気楽にまじめに本音で対話する場を設けています。
さらに、2018年度より「ソウコミ(社員同士の双方向コミュニケーション)」活動を展開し、「言う・言える・聞く」を合言葉に心理的安全性の高い組織風土を醸成しているのも特徴的。職場ごとにランチミーティングやチーム内対話を実施し、コミュニケーションの質を高めています。
若手・中堅社員が自らの意思で成長の場を獲得できる機会として、国内の社会課題解決型プロジェクトへの参画や、海外拠点への「グローバルチャレンジ」といった制度も設けており、自律的なキャリア形成を支援している点も見逃せません。
参考:沖電気工業株式会社
パナソニック
パナソニックは、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を経営戦略の柱の一つと位置づけ、「人権の尊重」と「企業競争力の向上」の2つの観点からウェルビーイングを推進している企業です。
同社の取り組みで特に注目すべきは、現場の声を丁寧に拾い上げて制度化している点。例えば、「生理」という言葉で休暇を伝えづらいという声をきっかけに、2023年4月より生理休暇の名称を「たんぽぽ休(通称:T休)」に変更しました。また、生理用品を女性用お手洗いに設置する取り組みも実施しています。
さらに、2023年10月より卵子凍結に対する助成制度を導入し、女性社員が自律的なライフプランを設計できるよう、採卵・凍結費用を40万円を上限に補助しているのも先進的な取り組みです。
働き方の柔軟性も高く、週3、4日勤務や副業を認めるだけでなく、Work Anywhere制度を導入し、働く場所を自ら選択できる自由度の高い働き方を実現しています。
また、ユニークなのが就業時間中の禁煙をルール化した「イエローグリーンアクション」です。受動喫煙・三次喫煙のない職場を目指し、段階的に取り組みを進めています。
業務効率化にも力を入れており、顧客価値につながらない「内向き仕事」を徹底的に削減し、週報の廃止やハンコ業務の約80%削減を実現。さらに、社員向けAIアシスタント「ConnectAI」を全社員に提供し、業務生産性向上とAI活用スキル向上を図っているのも先進的です。
これらの事例からわかるように、ウェルビーイング経営には決まった正解はありません。自社の理念や文化に合わせて、従業員が本当に幸せを感じられる取り組みを設計することが重要なのです。
参考:パナソニック
ウェルビーイング経営はまずGivefitの導入から!
ここまでウェルビーイング経営について詳しく解説してきましたが、「何から始めればいいのか迷っている」という方も多いのではないでしょうか。ウェルビーイング経営の実現には様々なアプローチがありますが、まず取り組むべきは従業員の健康状態の把握です。
心身の健康は、ウェルビーイングの土台となる要素。従業員が身体的に健康でなければ、精神的な充実や社会的なつながりを実現することも難しくなります。そこで、ウェルビーイング経営の第一歩として、健康管理アプリ「Givefit」の導入をおすすめします。
Givefitが選ばれる3つの理由
Givefitは、従業員の健康管理を手軽に始められる健康管理アプリサービスです。
まず、毎日の健康を簡単に記録できる点が大きな特徴。難しい操作は一切不要で、体重や歩数、睡眠時間などの基本的な健康データをスマートフォンから気軽に入力できます。従業員一人ひとりが自分の健康状態を可視化することで、セルフケアへの意識が自然と高まるのです。
次に、手軽に健康管理ができるから始めやすいという点も重要なポイント。大掛かりなシステム導入や複雑な設定は不要で、すぐに利用を開始できます。従業員にとっても負担が少ないため、健康管理の習慣が定着しやすくなります。
さらに、リーズナブルに従業員の健康管理が行えるため、コストを抑えながらウェルビーイング経営への第一歩を踏み出せます。特に中小企業にとって、限られた予算の中で効果的な健康管理を実現できることは大きなメリットと言えるでしょう。
健康データの見える化が組織改善につながる
Givefitで従業員の健康データを蓄積することで、組織全体の健康課題が明確になります。例えば、「特定の部署で睡眠不足の従業員が多い」「運動習慣のある従業員が少ない」といった傾向が見えてくれば、具体的な改善策を検討できるようになるのです。
こうしたデータに基づく改善活動により、業務の進め方や働き方の見直しにつながり、結果として生産性の向上や従業員満足度の向上が期待できます。Givefitで従業員の健康管理を行うことが、業務改善の第一歩となるのです。
小さく始めて、大きく育てる
ウェルビーイング経営は、一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、従業員の健康管理という身近なところから始めることで、着実に前進できます。Givefitで従業員と企業の双方が健康データを共有し、お互いに健康への関心を高めていく。そこから対話が生まれ、より良い職場環境づくりへとつながっていきます。
まずは手軽に始められる健康管理から。Givefitを活用して、従業員の幸福と企業の成長を同時に実現するウェルビーイング経営への一歩を踏み出しましょう。
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