従業員のメンタルケアは会社の義務?企業が取り組むべき4つのケアや具体例を解説!

近年、職場におけるメンタルヘルスへの関心が高まっています。

従業員のストレスや心の不調が原因で、休職や離職に至るケースは決して珍しくありません。実際、メンタルヘルス不調による休職者や退職者が出ている企業は年々増加傾向にあります。こうした状況を受けて、国は企業に対して従業員のメンタルケアに関する義務を課すようになりました。

では、企業は具体的にどのようなメンタルケアを実施する必要があるのでしょうか。本記事では、法律で定められた企業の義務や、実際に取り組むべき4つのケアについて詳しく解説していきます。

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目次

従業員のメンタルケアは法的に義務化されている

従業員のメンタルヘルスケアは、企業の「任意の取り組み」ではありません。実は法律によって、一定の義務が定められています。ここでは、企業が押さえておくべき法的義務について解説しましょう。主な義務は以下の4点です。

  • 従業員の健康を守る「安全配慮義務」
  • 年1回の「ストレスチェック」実施
  • 長時間労働者への医師面談実施
  • 小規模事業者は「努力義務」

従業員の健康を守る「安全配慮義務」

企業には、労働契約法第5条によって「安全配慮義務」が課せられています。これは、従業員が安全に働ける環境を整備する義務のこと。具体的には、従業員の生命や身体だけでなく、心の健康も含めて守らなければなりません。

この義務を怠った場合、従業員がメンタルヘルス不調に陥ったとき、企業が損害賠償責任を負う可能性があります。過重労働やハラスメントが原因で従業員がうつ病などを発症した場合、企業の責任が問われるケースは少なくありません。

安全配慮義務は、単に事故を防ぐだけでなく、メンタル面での配慮も含まれる点がポイント。職場環境の改善や相談体制の整備など、従業員の心の健康を守るための積極的な取り組みが求められます。

参考:労働契約法( 平成19年12月05日法律第128号) – 厚生労働省

年1回の「ストレスチェック」実施

従業員数50人以上の事業場では、労働安全衛生法により年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックとは、従業員が自分のストレス状態を把握するための検査です。

この検査は、従業員自身が心の不調に早期に気づくことを目的としています。質問票に回答することで、自分のストレスレベルや心身の状態を客観的に知ることができる仕組み。検査結果は本人にのみ通知され、本人の同意なしに企業が閲覧することはできません。

ただし、高ストレスと判定された従業員が希望した場合は、医師による面接指導を実施する必要があります。企業は面接指導の結果に基づき、必要に応じて労働時間の短縮や配置転換などの措置を講じることが求められます。

長時間労働者への医師面談実施

時間外労働が月80時間を超える従業員に対しては、本人が申し出た場合、医師による面接指導を実施しなければなりません。

これも労働安全衛生法で定められた義務の一つ。

長時間労働は、身体だけでなく心の健康にも大きな影響を及ぼす要因です。過労によるメンタルヘルス不調や、最悪の場合は過労死につながる危険性もあります。そのため、長時間労働をしている従業員に対しては、特に注意深いケアが必要となります。

面接指導では、医師が従業員の疲労の蓄積状況や心身の健康状態を確認。その結果に基づいて、企業は適切な就業上の措置を講じる義務があります。

労働時間の短縮や業務の見直しなど、具体的な対応が求められるでしょう。

小規模事業者は「努力義務」

従業員数50人未満の小規模事業場については、ストレスチェックは「努力義務」とされています。つまり、実施が強く推奨されているものの、法的な罰則はありません。

しかし、努力義務だからといって何もしなくて良いわけではありません。小規模事業場でもメンタルヘルス不調を訴える従業員は出てきますし、前述の安全配慮義務はすべての事業場に適用されます。

小規模事業場では、衛生管理者などの専門スタッフがいないことも多いでしょう。その場合は、「事業場内メンタルヘルス推進担当者」を選任し、その担当者を中心にメンタルヘルス対策を進めていくことが推奨されています。また、産業保健総合支援センターなど外部の支援機関を活用するのも有効な方法です。

従業員のメンタルケアで得られるメリットとは

メンタルヘルス対策は、法律で義務付けられているから行うものと捉えられがちです。しかし実際には、企業にとって多くのメリットをもたらす重要な施策でもあります。従業員の心の健康を守ることは、結果として企業の成長にもつながるのです。

ここでは、メンタルケアに取り組むことで得られる主なメリットを4つご紹介します。

  • 社員の働く意欲と生産性向上
  • 離職や休職が減り人材が定着
  • 組織力がアップする
  • 企業イメージ向上にもつながる

社員の働く意欲と生産性向上

メンタルヘルスケアに力を入れることで、従業員の働く意欲や生産性が高まります。心が健康な状態であれば、仕事に前向きに取り組めるようになるためです。

逆に、メンタルヘルス不調の状態では、集中力や判断力が低下してしまいます。本来の能力を発揮できず、ミスが増えたり作業スピードが落ちたりする可能性も。こうした状態を放置すれば、生産性の大幅な低下を招きかねません。

実際の研究でも、職場環境の改善にかかるコストよりも、メンタルヘルスの予防対策を行う方が約2〜3倍のメリットが得られることが示されています。つまり、メンタルケアは単なる「守りの施策」ではなく、生産性向上につながる「攻めの投資」でもあるのです。

離職や休職が減り人材が定着

適切なメンタルヘルス対策を実施することで、従業員の休職や離職を防ぐ効果が期待できます。現在、メンタルヘルス不調による休職者や退職者が出ている企業は少なくありません。特に大規模な企業ほど、この問題に直面している傾向があります。

人材の流出は、企業にとって大きな損失です。採用コストや育成コストがかかるだけでなく、業務のノウハウも失われてしまいます。少子高齢化が進む日本では、今後ますます人材確保が困難になると予想されている状況。貴重な人材を失わないためにも、メンタルケアへの取り組みは欠かせません。

また、メンタルヘルス不調は再発しやすいという特徴もあります。一度休職した従業員が復職後に再び不調をきたし、最終的に離職してしまうケースも見られます。

継続的なケアによって、こうした再発を防ぐことも重要でしょう。

組織力がアップする

メンタルヘルス対策を進めることは、組織全体の力を高めることにもつながります。従業員一人ひとりが心身ともに健康であれば、チーム全体の連携やコミュニケーションも円滑になるためです。

上司や同僚との関係が良好で、気軽に相談できる環境があれば、小さな悩みやストレスも早期に解決できます。こうした職場では、従業員同士が協力し合い、お互いをサポートする文化が育ちやすいでしょう。

反対に、メンタルヘルス不調者が出やすい職場では、チーム全体の雰囲気も悪化しがちです。一人の不調が周囲に影響を及ぼし、組織全体の士気が下がってしまうこともあります。

メンタルケアは、個人だけでなく組織全体のパフォーマンスを高める施策なのです。

企業イメージ向上にもつながる

従業員のメンタルヘルスに配慮している企業は、社会的な評価も高まります。働きやすい職場環境を整備している企業として、対外的なイメージが向上するためです。

近年、就職活動をする学生や転職を考える人々は、給与や福利厚生だけでなく、働きやすさや職場環境を重視する傾向にあります。「従業員を大切にする企業」というイメージは、優秀な人材を引き寄せる力になるでしょう。

また、取引先や顧客からの信頼獲得にもつながります。従業員が心身ともに健康で、いきいきと働いている企業は、安定したサービスや商品を提供できると評価されやすいもの。

メンタルヘルス対策への取り組みは、企業価値を高める重要な要素となっているのです。

会社が取り組むべき職場のメンタルヘルス「4つのケア」

メンタルヘルス対策を効果的に進めるためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。厚生労働省は、職場におけるメンタルヘルスケアとして「4つのケア」を推進しています。

この4つのケアは、それぞれ異なる視点からのアプローチです。従業員本人による取り組み、管理職による支援、専門家によるサポートなど、多層的なケア体制を構築することが重要とされています。

ここでは、企業が実施すべき4つのケアについて、具体的に解説していきましょう。

  • セルフケア
  • ラインによるケア(上司・管理職による支援)
  • 事業場内の専門スタッフによるケア(産業医・保健師などの配置や社内相談窓口の設置)
  • 事業場外の専門機関によるケア

セルフケア

セルフケアとは、従業員自身が行うメンタルヘルスケアのことです。

自分の心の状態を把握し、ストレスに気づいて適切に対処する力を身につけることを目指します。

企業としては、従業員がセルフケアを実践できるよう支援する役割があります。具体的には、メンタルヘルスに関する知識を学ぶ研修会の開催や、セルフチェックツールの提供などが効果的。自分のストレス状態を定期的に確認する習慣をつけることで、不調の兆候を早期に発見できるようになります。

また、ストレス解消法やリラックス方法についての情報提供も大切です。休息の取り方や趣味の時間を持つことの重要性など、日常生活で実践できる具体的な方法を伝えましょう。

従業員一人ひとりが自分の心の健康に関心を持ち、主体的にケアできる環境を整えることが、セルフケアの第一歩となります。

ラインによるケア

ラインによるケアとは、上司や管理職といった管理監督者が行うメンタルヘルスケアを指します。

日常的に部下と接している立場だからこそ、些細な変化に気づきやすいという特徴があります。

管理職には、部下のメンタルヘルス不調の兆候を早期に発見し、適切に対応する役割が求められます。いつもより元気がない、遅刻や欠勤が増えた、ミスが目立つようになったなど、普段と違う様子が見られたら注意が必要。声をかけて話を聞くことが、早期対応の第一歩です。

企業としては、管理職に対してメンタルヘルスケアに関する研修を実施しましょう。部下の話の聞き方や、相談を受けたときの対応方法など、実践的なスキルを習得してもらうことが大切です。また、職場環境の改善を進めることも管理職の重要な役割。

業務量の調整や人間関係の調整など、ストレス要因を減らす取り組みが求められます。

事業場内の専門スタッフによるケア

事業場内の専門スタッフによるケアは、産業医や保健師、公認心理師といった専門家が行うメンタルヘルスケアです。医学的・心理学的な専門知識を活かした支援が特徴となります。

産業医は、従業員の健康状態を医学的に評価し、就業の可否や必要な配慮について判断します。定期的な面談や職場巡回を通じて、メンタルヘルス不調の予防や早期発見に努めることが役割。また、保健師や心理職は、従業員からの相談対応や健康教育を担当します。

企業は、社内に相談窓口を設置することも効果的です。専門スタッフに気軽に相談できる環境があれば、従業員は小さな悩みでも相談しやすくなります。ただし、専門家への相談は「ハードルが高い」と感じる人も少なくありません。

月1回の巡回相談を実施するなど、専門スタッフを身近に感じてもらえる工夫が必要でしょう。

事業場外の専門機関によるケア

事業場外の専門機関によるケアは、社外のリソースを活用したメンタルヘルスケアです。

精神科や心療内科などの医療機関、外部の相談窓口、リワーク施設などが該当します。

社内だけでは対応が難しいケースや、より専門的な治療が必要な場合に、外部機関との連携が重要になります。従業員が休職に至った際には、主治医やリワーク施設と協力しながら、回復状況を見極めて復職支援を進めていく必要があるでしょう。

また、外部の専門家を招いてメンタルヘルス研修を実施したり、匿名で利用できる電話相談窓口を委託したりすることも有効な方法です。特に小規模な企業では、社内に専門スタッフがいないことも多いため、外部機関の積極的な活用が推奨されています。

産業保健総合支援センターなど、公的な支援機関も活用できます。

4つのケアを組み合わせて進めるコツ

4つのケアは、それぞれが独立して機能するものではありません。互いに連携し、組み合わせることで、より効果的なメンタルヘルス対策となります。

まず重要なのは、企業としてメンタルヘルス対策の方針を明確にすることです。どのような体制で誰が何を担当するのか、推進体制を整備しましょう。衛生委員会などで定期的に話し合い、取り組み状況を確認することも大切です。

次に、4つのケアが有機的につながる仕組みを作ります。例えば、セルフケアで従業員が自分の不調に気づき、ラインによるケアで上司が早期に対応。必要に応じて事業場内の産業医につなぎ、さらに専門的な治療が必要であれば事業場外の医療機関を紹介する、といった流れです。

また、各ケアの質を高めるための教育も欠かせません。従業員向けのセルフケア研修、管理職向けのラインケア研修など、それぞれの立場に応じた知識やスキルを習得できる機会を設けましょう。

継続的な取り組みによって、メンタルヘルスケアが企業文化として定着していくことが理想的です。

従業員のメンタルケアで注意すべき落とし穴

メンタルヘルス対策を導入しても、思うような効果が得られないケースがあります。制度を整えただけで満足してしまい、実際には機能していないという企業も少なくありません。

せっかく時間とコストをかけて対策を講じても、運用面で問題があれば意味がないもの。ここでは、メンタルケアを進める際に注意すべき落とし穴を3つご紹介します。これらのポイントを押さえることで、より実効性の高い取り組みが可能になるでしょう。

  • 整えた制度が社員に浸透していない
  • 行き過ぎた社内共有が行われる
  • 人事や上司に負担が偏る

整えた制度が社員に浸透していない

メンタルヘルス対策で最も多い失敗が、せっかく制度を整えても従業員に認知されていないというケースです。相談窓口を設置したのに誰も利用しない、ストレスチェックを実施しても回答率が低いといった状況に陥りがち。

制度があることを知らなければ、従業員は活用できません。メンタルヘルス対策を導入する際は、全社的に周知することが不可欠です。社内報やメール、朝礼などさまざまな機会を活用して、繰り返し情報を発信しましょう。

また、制度の内容をわかりやすく伝えることも重要。「どんなときに」「誰に」「どうやって」相談すればいいのか、具体的な利用方法を示すことで、従業員の心理的なハードルを下げられます。ポスターや小冊子を作成し、手に取りやすい形で情報提供するのも効果的な方法です。

さらに、定期的に制度の存在を思い出してもらう工夫も必要でしょう。年に一度の周知では忘れられてしまいます。

四半期ごとや半期ごとに改めて案内を出すなど、継続的な情報発信を心がけることが大切です。

行き過ぎた社内共有が行われる

メンタルヘルスに関する情報は、極めてデリケートな個人情報です。しかし、善意から情報を共有しすぎてしまい、かえって従業員の不信感を招くケースがあります。

例えば、ある従業員がメンタルヘルス不調で相談したことが、本人の知らないところで多くの人に伝わってしまう。こうした状況は、プライバシーの侵害にあたります。一度でもこのような事態が起きれば、「相談すると会社中に知られてしまう」という不安から、誰も相談窓口を利用しなくなるでしょう。

メンタルヘルス情報を扱う際は、必ず本人の同意を得ることが原則。情報を知る必要がある人を最小限に絞り、共有範囲を明確にしておく必要があります。診断書などの書類がどのようなルートで回覧されるのか、誰が内容を確認するのか、社内でのルールを明確に定めておきましょう。

また、担当者には守秘義務についての教育も欠かせません。

たとえ同僚同士の何気ない会話であっても、職務上知り得た個人情報を漏らすことは許されないという意識を徹底することが重要です。

人事や上司に負担が偏る

メンタルヘルス対策を進める際、特定の担当者だけに負担が集中してしまうケースも見られます。

人事部の担当者や現場の上司が、すべての対応を一手に引き受けることになり、疲弊してしまうのです。

特に管理職は、通常業務に加えて部下のメンタルケアまで求められると、大きなストレスを抱えることになります。「自分が何とかしなければ」という責任感から、一人で抱え込んでしまう人も少なくありません。結果として、支援する側がメンタルヘルス不調に陥ってしまうという本末転倒な事態も起こりえます。

この問題を防ぐには、組織全体で対応する体制を作ることが必要です。人事担当者や管理職が孤立しないよう、相談できる相手を複数用意しておきましょう。産業医や保健師、外部の専門機関などと連携し、適切に役割分担することが大切です。

また、メンタルヘルス推進担当者を複数名選任したり、サポート体制を明確にしたりすることも有効。一人の担当者に責任が集中しない仕組みを作ることで、持続可能なメンタルヘルス対策が実現できるでしょう。

メンタルケアが必要な社員への対応と流れ

実際に従業員がメンタルヘルス不調の兆候を示したとき、企業はどのように対応すればよいのでしょうか。適切な初動対応と、その後の継続的なサポートが重要となります。

ここでは、メンタルケアが必要な従業員への具体的な対応の流れを解説していきます。段階を追って適切に対処することで、従業員の早期回復と円滑な職場復帰につながるでしょう。

産業医面談を実施する

メンタルヘルス不調の兆候が見られたら、まず産業医による面接指導を実施します。これは、医学的な観点から従業員の健康状態を評価し、適切な対応方針を決定するための重要なステップです。

産業医面談では、従業員の心身の状態や疲労の蓄積度、業務遂行能力などを確認。医学的な見地から、現在の業務を継続できるか、何らかの配慮が必要か、あるいは休養が必要かを判断します。

ただし、産業医面談は強制できるものではありません。従業員によっては「評価が下がるのではないか」「周囲に知られたくない」といった不安から、面談を避けたがることもあります。企業側は、面談を受けることで不利益を被ることはないこと、内容は守秘義務で守られることをしっかりと説明することが大切です。

面談を勧めるタイミングも重要なポイント。あまりに早すぎると本人が拒否する可能性がありますし、遅すぎると症状が悪化してしまいます。

日頃から従業員の様子を観察し、適切なタイミングで声をかけられるよう、上司や人事担当者との連携を密にしておきましょう。

緊急性がある場合は医療機関へつなぐ

産業医の判断により、専門的な治療が必要と判断された場合は、速やかに医療機関への受診を勧めます。特に、自傷行為の可能性がある、幻覚や妄想が見られるなど、緊急性が高いケースでは迅速な対応が求められます。

産業医はあくまで「働けるかどうか」を判断する立場であり、診断や治療を行うわけではありません。そのため、メンタルヘルス不調が疑われる場合は、精神科や心療内科などの専門医による診察が必要となります。

医療機関を紹介する際は、できるだけ具体的な情報を提供しましょう。職場の近くや自宅の近くにある医療機関、初診でも受け入れてくれるクリニックなどを複数提示できると親切です。ただし、最終的にどの医療機関を選ぶかは本人の判断に委ねることが基本となります。

また、治療には時間がかかることを理解しておく必要があります。薬物療法を開始しても、効果が現れるまでに数週間かかることも珍しくありません。焦らず、じっくりと治療に専念できるよう、企業側からもサポートする姿勢を示すことが重要です。

社内で対応を共有する

従業員のメンタルヘルス情報を社内で共有する際は、細心の注意が必要です。

情報共有は必要最小限の範囲にとどめ、必ず本人の同意を得てから行います。

共有すべき相手は、直属の上司、人事担当者、産業医など、対応に直接関わる人に限定しましょう。部署全体や他部署に伝える必要はありません。また、具体的な診断名や治療内容まで共有する必要もなく、「体調不良のため配慮が必要」といった必要最小限の情報で十分です。

共有する内容としては、業務上の配慮事項が中心となります。労働時間の短縮が必要か、業務内容の調整が必要か、定期的な面談が必要かなど、実務的な対応方針を関係者間で確認。この際も、なぜそのような配慮が必要なのか、医学的な詳細まで説明する必要はありません。

情報管理のルールを明確にしておくことも大切です。誰がどこまでの情報にアクセスできるか、書類の保管方法はどうするかなど、事前に社内規定を整備しておきましょう。

休職が必要な場合は手続きと支援を行う

医師の診断により休職が必要と判断された場合は、速やかに休職手続きを進めます。同時に、従業員が安心して休養に専念できるよう、必要な情報提供とサポートを行うことが重要です。

まず、休職に関する社内規定を丁寧に説明しましょう。休職期間の上限、休職中の給与の扱い、社会保険料の支払い方法など、従業員が不安に思う点を明確にします。また、傷病手当金などの公的な支援制度についても案内することが大切です。

休職中の連絡方法についても取り決めておきます。月に一度、体調報告のメールを送ってもらうなど、負担にならない範囲での連絡ルールを設定。ただし、頻繁な連絡は休養の妨げになるため、必要最小限にとどめることが原則です。

また、休職中も従業員が孤立しないよう配慮が必要。「いつでも相談してください」というメッセージを伝えつつ、プレッシャーにならないよう距離感を保つバランスが求められます。

定期的な産業医面談を設定し、回復状況を確認しながら復職に向けた準備を進めていくとよいでしょう。

復職は段階的に行う

休職していた従業員が復職する際は、段階的なプランを立てて進めることが重要です。

いきなりフルタイムで元の業務に戻すのではなく、徐々に負荷を上げていく方法が推奨されます。

復職可否の判断は、主治医と産業医の両方の意見を踏まえて行います。主治医から「復職可能」という診断書が出されても、産業医が実際の業務内容を考慮して最終判断を下すことが一般的。両者の連携が円滑に進むよう、企業側が調整役を担いましょう。

復職初期は、短時間勤務からスタートするケースが多く見られます。例えば、最初の1〜2週間は1日4時間勤務、次の2週間は6時間勤務、その後フルタイムに移行するといった具合。本人の体調を見ながら、柔軟に調整することが大切です。

業務内容についても配慮が必要です。復職直後は責任の重い仕事や、プレッシャーの大きい業務は避け、比較的負担の少ない業務から始めることが望ましいでしょう。また、定期的な面談を実施し、本人の状態を確認しながら、無理のないペースで業務を増やしていきます。

再発防止のためには、復職後のフォローアップも欠かせません。3か月後、6か月後といった節目で産業医面談を行い、順調に職場に適応できているか確認。問題があれば早期に対処することで、再休職のリスクを減らすことができるでしょう。

企業で導入されている従業員のメンタルケア具体例

メンタルヘルス対策の理論は理解できても、実際にどのように進めればよいのか迷う企業は多いでしょう。ここでは、メンタルケアに積極的に取り組んでいる3つの企業の具体例をご紹介します。

それぞれの企業が独自の工夫を凝らし、従業員のメンタルヘルス向上に成功している事例です。自社の規模や業種に合わせて、参考にできる取り組みがきっと見つかるはずです。

大阪ガスの具体例

大阪ガスは、従業員の健康管理に長年力を入れてきた企業として知られています。1976年には経営方針に「健康づくりのための施策」を掲げており、心身の健康を経営の重要課題として位置づけてきました。

同社の特徴的な取り組みが「ヘルシー7」という行動指針。体重、食事、運動、飲酒、禁煙、睡眠、ストレスの7つの健康指標を設定し、従業員にわかりやすく健康管理の目標を示しています。単なる数値目標ではなく、Gasの炎をモチーフにしたキャラクターやロゴを作成することで、親しみやすさも演出。

さらに、「みんなで歩活」というウォーキングキャンペーンを年2回実施しており、2023年春には4,672名が参加する大規模イベントに成長しました。健康づくりを楽しみながら続けられる工夫が随所に見られます。

メンタルヘルス対策としては、組織担当制を採用している点が注目に値します。各組織に担当する医療職を明確に配置し、現場の「衛生担当者」との連携を密にすることで、きめ細かなサポート体制を構築。健康診断を毎日実施し、受診率100%を維持するなど、従業員の健康状態を常に把握できる仕組みも整えています。

ストレスチェックは年2回実施し、高ストレス者に対しては医師による面接指導だけでなく、組織担当の医療職が個別にフォローを実施。さらに、社内に外部精神科医が週2回来訪する体制を整え、従業員が専門医に相談しやすい環境を作っている点も特徴的です。

参考:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳

パナソニックの具体例

パナソニックグループでは、「こころの健康づくり」を健康経営の重要な柱として位置づけています。

メンタルヘルス教育を従業員向けと管理者向けの両方で実施し、組織全体でメンタルケアに取り組む体制を整えています。

ストレスチェックの受検率は95%以上と高水準を維持。全体としては全国平均を上回る良好な結果を示していますが、個別に見ると高ストレスの職場も存在することを認識。そうした職場に対しては、職場改善の取り組みを積極的に行い、心身ともに健康な職場づくりに努めています。

同社では、定期健康診断やストレスチェックなどの健康データを詳細に分析している点も特徴的です。その結果、運動、食事、睡眠、飲酒、禁煙の5項目について健康的で適正な生活習慣を併せ持つほど、肥満や身体の不調が少なく、仕事のパフォーマンスも高いことが判明。このデータに基づき、生活習慣全般の改善を推進しています。

長時間労働の抑制や育児・介護との両立支援など、働きやすい環境づくりにも注力。メンタルヘルス対策を単独の施策として捉えるのではなく、働き方改革や職場環境改善と一体的に進めることで、より効果的な取り組みを実現しています。

参考:パナソニックホールディングス株式会社

ニチレイの具体例

ニチレイグループは、2015年に健康経営の専任部署を設置して以来、組織的なメンタルヘルス対策に力を入れています。2024年には「ウェルビーイング経営推進室」に改組し、従業員の健康とウェルビーイングをさらに重視する姿勢を明確にしました。

同社の代表的な取り組みが「COCOサポ育成制度」です。これは役職者を対象としたラインケア研修で、必須受講としている点が特徴。事例検討やロールプレイングを通じて、実践的なメンタルヘルスのスキルを習得できる内容になっています。2023年度末時点で370名が修了しており、研修後も「振り返りtime」という場を設けて、継続的なスキルアップと修了者間のつながり強化を図っています。

また、セルフケアの推進にも独自の工夫が見られます。保健師が出演するメンタルヘルス関連のeラーニングを自社で制作し、社内で「ニチレイのYouTuber」として親しまれる存在に。動画を視聴した従業員が保健師を身近に感じることで、実際の事業場訪問時にも受け入れられやすくなるという好循環が生まれています。

さらに、「ニチレイ健康塾」という体験型健康支援プログラムを毎月開催。メンタルヘルスだけでなく、生活習慣病予防や女性の健康など幅広いテーマを扱い、オンライン開催により全国の従業員が参加しやすい仕組みを整えています。

深夜勤務や交代勤務など、働き方が多様な従業員が多い同社では、保健師が事前に職場の状況を把握した上で、現場に即した個別面談を実施。画一的な対応ではなく、一人ひとりの状況に合わせたきめ細かなケアを提供している点が高く評価されています。

参考:ニチレイ

従業員のヘルスケアは「GiveFit」から始めよう

ここまで、従業員のメンタルケアに関する法的義務や具体的な取り組み方法について解説してきました。しかし、実際に対策を始めようとすると「何から手をつければよいのか」「コストや手間が心配」と感じる企業も多いのではないでしょうか。

そんな企業におすすめしたいのが、健康管理アプリ「GiveFit」です。従業員の心身の健康管理を、シンプルかつ効果的にサポートするツールとして、多くの企業に選ばれています。

毎日の健康を簡単に記録できる

GiveFitの最大の特徴は、誰でも使いやすいシンプルな設計。従業員は毎日の体調や気分、睡眠時間などを手軽に記録できます。複雑な操作は一切不要で、スマートフォンから数タップで入力が完了。

日々の健康状態を記録することで、自分自身の体調の変化やストレスの兆候に気づきやすくなります。これはセルフケアの第一歩として非常に重要。メンタルヘルス不調は、身体的な変化として現れることも多いため、継続的な健康記録が早期発見につながるのです。

手軽に始められるから導入しやすい

健康管理施策を導入する際、従業員の負担が大きいと定着しません。GiveFitは、手軽に健康管理ができるよう設計されているため、従業員が無理なく続けられます。

特別な知識や訓練は不要で、直感的に使える操作性が魅力。新しいツールに不慣れな従業員でも、すぐに使い始めることができるでしょう。健康管理のハードルを下げることで、より多くの従業員が自分の健康に関心を持つきっかけを作れます。

リーズナブルだから中小企業も安心

メンタルヘルス対策を進めたいと考えても、予算の制約で諦めてしまう企業は少なくありません。特に中小企業では、専門のスタッフを雇用したり、高額なシステムを導入したりすることが難しい場合もあるでしょう。

GiveFitは、リーズナブルな価格設定で従業員の健康管理が行えるアプリです。大規模な投資をせずとも、本格的な健康管理施策をスタートできます。コストを抑えながら、従業員の健康を守る取り組みを始められる点は、企業にとって大きなメリットとなるはずです。

業務改善にもつながる健康管理

従業員の健康管理は、単に病気を予防するだけではありません。GiveFitを通じて従業員の健康状態を把握することで、組織全体の業務改善にもつながります。

健康データを分析すれば、どの部署にストレスが集中しているか、どの時期に体調不良者が増えるかといった傾向が見えてきます。こうした情報は、業務配分の見直しや職場環境の改善に活用可能。結果として、生産性の向上や離職率の低下といった成果につながっていくのです。

従業員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと働ける職場を実現するために。まずは手軽に始められるGiveFitから、従業員のヘルスケアをスタートしてみませんか。

村上克利
代表取締役
13年間にわたりパーソナルジム「POLUM」を経営し、幅広い世代・職業層の健康改善をサポート。
身体づくりに合わせ、メンタル面や生活習慣の改善にも注力し、多くの顧客から「続けられる健康習慣」を引き出す指導を行う。

その豊富な現場経験を企業向けの健康経営に応用し、従業員の健康増進と組織の活性化を目的とした健康管理アプリ「Givefit」を開発。

「Givefit」では、個人の健康データをもとにした最適なアドバイスや行動プランを提供。
健康習慣の定着を支援し、企業全体の生産性向上や離職防止に貢献。
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